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お勧め参考書リスト
~初等物理学編

Last update: 7th/Aug./'00 α版


力学・解析力学 | 電磁気学 | 熱力学 | 統計力学 | 量子力学 | 物理数学 |

学部一、ニ、三年の所謂初等物理学を扱った基本的、或いは有名な参考書。カリキュラムは千葉大物理学科の過去三年間のものを想定した。★は、分りやすさ、使いやすさに付いての主観的直感的な、各分野毎の相対評価:
  ★★―頗る結構; ★―コイツやりやがる; ナシ―悪くない。
こういう評価をする人もいる、と云う位のもので、私もいいかげんに付けている。面白くても、短観的効果の低いものに付いては★は付けていない。寸評も主観的過ぎて的外れかもしれない。ただ、世間の常識から、著しくはかけ離れていないとは思う。

載録方針は以下の通り。いずれも主観的感覚的で、当然ながら如何なる理論的背景も有しない。

但し初歩的なものには余り特徴が無いので、その手の有名なものは端折った。私はそう云う本も利用しました。

…… 「なんでお前が、こんなもん作ってるんだ」 なんて云っちゃいやよ。作っちゃったからアップした、唯それだけのこと。


力学

原島鮮 「力学 I-質点・剛体の力学- 」 裳華房★★
力学のテキストの中では出色。論述がコンパクトに手際良くまとめられている。計算も丁寧に書いてある。
原島鮮 「力学 II -解析力学- 」 裳華房 ★★
原島鮮 「力学」 裳華房  
未確認。あと「質点系の力学・剛体の力学」なんてのも有るな。
内山恭彦 「一般力学 」 岩波書店
田辺行人・品田正樹 「理・工基礎 解析力学 」 裳華房
簡単、丁寧。悪くは無いが、物足りない? リファレンスには最適。

電磁気学

あんまり知らない

V.D.バーガー/M.G.オルソン 「電磁気学 新しい視点にたって I・II」 培風館
標準的な教科書。但し本文中、回路への言及は殆ど無い。
平川浩正 「電磁気学 (新物理学シリーズ2) 」 培風館 ★
高橋秀敏 「電磁気学 (物理学選書3) 」 裳華房
高橋康 「電磁気学再入門 QEDへの準備 」 講談社
Maxwell Eq. から電磁気学を体系化。ありきたりなゴシャゴシャした参考書に飽きた人はこれ。
ファインマン物理学III 電磁気学 」 岩波書店
ファインマン物理学 シリーズのなかでも出色の出来映え。彼の地口と標準的カリキュラムの幸福な遭遇と云ったところか。処何処に漏れる彼の声はかなり笑えて、実ににぎやか。
小出昭一郎 「電磁気学演習」 裳華房 基礎物理学選書 21.
問題数の多さに辟易。勉強してるゾォってかんじ? 体系化と云う点では弱いが、網羅的。各章冒頭の解説では基本的定理が丁寧に証明されており、また最後の章では相対論に適切な分量割かれているのには好感が持てる。各個撃破的ゲリラ戦には良し。

熱力学統計力学

三宅哲 「熱力学 」 裳華房
宮下精二 「熱力学の基礎 」 サイエンス社
田崎晴明 「熱力学 現代的視点から 培風館 ★★
エントロピーの導入が独特。技術的な習得のしやすさよりも、論理の流れの見通しの良さを優先した現代的教科書。過去の伝統的な論法、導入方法の批判的側面も有る。非常に丁寧に書いてあり、これほど地の文が多い教科書も珍しいのでは。理論体系の説明が主なので、後半に入らないと、実際的な系を例題としてエントロピーの温度依存性や変化の自発性を論じられない。前半は数式で表わされる計算可能な公式的なものは殆ど表れないという点は読者に忍耐を強いる面でも有ると思う。強磁性体や相転移を理論の直接的な応用として採り挙げられており、その点でも面白い。熱力学再入門や輪講にはうってつけ。
高橋康 「統計力学入門―愚問からのアプローチ 」 講談社 ★★
記述はちょっとごちゃごちゃしているが、論旨は明快で見通しが良い。あれよあれよと云う間に統計力学が体系化されていくさまは圧巻。誤植も多いが、すぐ分るレベルのものばかり。突っ込み甲斐の有る良いホン。
長岡洋介 「統計力学 (岩波基礎物理学シリーズ7)」 ★
このレベルの本にしては珍しい話題にも触れている。
久保亮五 「大学演習 熱学・統計力学 」 裳華房 ★
古典的名著。問題数、ヴァリエイションは流石。各章冒頭の解説は示唆に富む。……富みすぎて何云ってんだか解読不可能なこともしばしば? ネタの宝庫。
難しいと感じられる場合は、
原島鮮 「熱学演習―熱力学 」 裳華房 基礎物理学選書 18. ★★
散漫になりやすい熱力学をコンパクトに解説。問題数も少なく、使いやすい。……参考書の方は、どうしてこう行かなかったんですかね。
市村浩 「熱学演習―統計力学 」 裳華房 基礎物理学選書 19.
計算の煩を厭わず紙幅を割いて、丁寧に書かれている。

量子力学

J.J.サクライ  「現代の量子力学 (上・下)」 吉岡書店 ★★
 ひとまず上巻だけでO.K. 但し摂動は下巻。「量子力学の理解」 と云う点で、本書に勝るものを知らない。前書きに依れば、波動力学について初歩的な知識は必要とされているが、心配する程ではない。ただ、解析力学に通じていると尚更良い。量子力学が正準理論に従って体系化されるさまが、そのまま量子力学の諸概念の理解に直結していく。素粒子屋さん。
猪木慶治・河合光 「量子力学 I・II」 講談社 ★
ひとまずI.だけでO.K. 但し摂動はII. 比較的新しい参考書で丹念に書かれている。これ一冊有ればひとまず、他の量子力学の本は必要無い。内容は高度。素粒子屋さん。
小出昭一郎 「量子力学 (I・II)」 裳華房 基礎物理学選書 5.
上巻は波動力学について、丹念に書かれている。下巻は趣味の分かれるところだか、多体系の量子力学について、実に丁寧に書かれている。物性屋さん。
朝永振一郎 「量子力学 I・II・III」 みすず書房
III.が角運動量で、別冊的扱い。物理学史的な話題も豊富な、歴史的名著。古い本だが、内容は古くない。行間から漏れる著者の呟きに、御人柄が偲ばれる。ちょっとした記述に、目から鱗な良い本。
ファインマン物理学V 量子力学 」 岩波書店
量子力学の直感的理解に向けて。ブラケットの解釈に全精力が向けられている。巻末の 「結びの言葉」 は感動的だ。
原島鮮 「初等量子力学」 裳華房
「初等」とは云っても波動力学の基本的な点は総て網羅してある。少々味気ない気もするが、コンパクト、丁寧、明快に解説してあり、リファレンスには最適か。小出昭一郎 「量子力学 (I・II)」 裳華房と殆ど同じだが、こちらの方が初学者に親切、丁寧。
町田茂 「基礎量子力学」 丸善 パリティー物理学コース
ブラケットの導入が丁寧で、量子力学入門書としては好著。J.J.サクライが難し過ぎると思ったら、これを副読書、入門書にしてはどうか。初等的な例題、解説も豊富。
小林公三 「量子力学の物理数学 表現と表示」 日本評論社
町田茂 「基礎量子力学」 丸善の類書として挙げておく。これは小冊子で、J.J.サクライでも採用していたように、リー演算子としての物理量に着目し、量子力学を正準理論から纏めている。J.J.の纏直しとして使ってみてはどうか。波動力学だけでやってきた方にはブラケット導入として、コンパクトで良し。

演習書

大学演習 量子力学 」 裳華房 ★★
波動力学の習得は本書で万全?
詳解 理論・応用 量子力学演習 」 共立出版株式会社 ★
裳華房と似た感じ。採り上げられている問題のヴァリエイションが豊富。
量子力学演習 」 裳華房 基礎物理学選書 17.
癖が無く、悪くない。古いけど。

物理数学

線形代数、微積分学、複素解析、ベクトル解析、フーリエ解析、微分方程式、統計学、等。

森毅 「現代の古典解析 」 日本評論社
京大の一刀斎こと森毅の本。数学屋さんが書いた解析学の本の中で、実に使いやすく分りやすい。彼の文章は語り口調が多いので、好き嫌いが分れるか。
一松信 「解析学序説 」 裳華房
数学屋さんの書いた本は読み慣れるまでが大変。でも本書はその中では分りやすい。一度は数学屋さんの本も読んでおくべき。
E.クライツィグ 「技術者のための高等数学 1.-6.」 培風館
特に、1.常微分方程式 北原和夫 訳 は必須。例題が豊富で、読んでいるうちに自然に分るようになる。学部三年のうちには分っておきたかった。
寺田文行・木村宣昭 「基本演習 線形代数 (基本演習ライブラリー1)」 サイエンス社
サイエンス社の本にしては割合高度なことまで書いてある。使いやすさは流石。学部二年のうちには分っておきたかった。

力学・解析力学 | 電磁気学 | 熱力学 | 統計力学 | 量子力学 | 物性物理学 | 物理数学 |

以上のリストは、乏しい個人的体験からの選択なので、挙げるべきものが漏れているはずである。また、批判の目的で挙げた本も一冊も無いので、片手落ちである。分野では、QED、相対論、物性、多粒子系の量子力学、場の量子論などは入れなかった。挙げたものの中にも、ざっと目を通しただけのものも含まれている。寸評も的外れかもしれない。以上のことを念頭にいれた上で、参考、目安程度に利用していただければ幸である。御教示、御批判を御願い致します。

全体に程度の高いリストになってしまったかもしれない。はじめて学習する分野に関しては、A4版soft cover の参考書、演習書などを利用するのも悪くないと思う。

……もし私のやったことが物理を嫌いにさせることになったとしたら、ここでお詫びしておきたい。……あなたに大変な迷惑をかけ、そのためにあなたがこの面白い仕事をやめにしてしまうことが無ければよいと思っている。だれかほかの人が、あなたに消化不良を起こさせないようなやり方で教えてくれることを期待してやまない。そして、いつの日にか、物理というものが、その見かけほどには嫌らしいものではないということを、最後にはわかるようになって欲しいと思う。

―“ファインマンの結びの言葉” ファインマン物理学V 量子力学 岩波書店 より

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